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村外れ、東の森、
黒い一角獣の丘の向こう 今日も雪車で遊ぼう。



彼はずっと眠ってる。
死んだように動かないけれど、時折白い息をもらす。
嘶きを最後に聞いたのは百年前のこと。

永い年月を経て豊かなたてがみは、
春に色とりどりの花々を散らし、
夏は鮮やかな緑をまとい、
秋には栗鼠たちが森の豊饒を祝い、
冬は木々の隙間に静かな眠りと安らかな死を招き寄せる。

「森は怖い。」と大人達はつぶやく。

彼を此処に喚んだのは、
私のおばあちゃんのおばあちゃんのおかあさん。
彼を此処に繋ぎ止めたのは村の女達。
命じたのは王様。

百年前の物語。そう遠くない過去。
伝説の獣の角を欲しがる王様と王様の一人娘のお姫様と
彼女に恋した白い獣のお話。

語り部は、私のおばあちゃん。
吹雪の夜、窓を叩く風音を聞きながら
暖炉を囲んで聞くその恋物語は、
母となった王様の娘が自分の子に伝えた切ない伝言。

今はもう此処にない小さな村。
(谷間に響いた嘶きが白い悪魔を呼び寄せたから。)
今はもう此処にいない白い獣。
(焦がれて黒く汚れてしまったから。)

赤い雪車をひいて、赤いマフラーと手袋と帽子をして、
私は彼をなだめに出向く。


村外れ、東の森、
黒い一角獣の丘の向こう さぁ今日も雪車で遊ぼう。

 遊ぶ? 眠る?

 

 

 

 

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